前回と前々回の続きです。
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カミカゼ航空特攻は敵空母に命中すれば戦果が期待できます。
しかし大和特攻は戦果がまったく期待できないので「特攻」とすら呼べません。
ただ死ぬだけなので特攻というよりはバンザイ突撃に近い。
「大和特攻」はむしろ「大和バンザイ突撃」です。
そしてその大和バンザイ突撃において軍事的、理論的な根拠は何もなかった。
まあ、バンザイ突撃に理論を求めても意味はないのかもしれません。
万策尽き果てた上でのバンザイ突撃なのですから。
ただし大和は軍隊ピラミッドの最下層の歩兵ではありません。
大日本帝国が最高の技術者と多額の国家予算を投じて建造した最終兵器であり、その最終兵器までもがバンザイ突撃を要求されたのです。
山本七平はそれを問題にしています。
日本という国では最高度の頭脳集団による最重要の判断も論理ではなく空気で決定されてしまう。
さて、そこで原発事故です。
事故の被害を最小限に抑える最も合理的な方法は福島の住人を強制避難させた上で汚染を福島に閉じ込めることです。
しかし今、政府が行っている除染は放射能の拡散でしかありません。
福島県内の拡散は無意味な行為ですし、県外への持ち出しは汚染されていない場所を汚染する行為です。
論理的に考えればバカげた行為です。
しかし全国の地方自治体がその考えを支持しています。
下のリンクは汚染がれきの受け入れを表明した自治体のリストです(週刊AERAより)。
http://flower707.exblog.jp/14449776/
汚染がれきも問題ですが、さらに深刻な問題は汚染食品による内部被曝です。
皮膚に付いた放射性物質は洗い流せますが、食べてしまった放射性物質は体内に蓄積する。
しかし政府は汚染食品の許容基準値を世界最高レベルに設定してしまった。
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http://kingo999.web.fc2.com/kizyun.html
原発そのものにしても野田総理は停止している原発の再稼動を計画している。
地震や津波を「想定外」などと言っている東電は合理的に考えればもはや信用できません。
東電の原発はすべて停止させるべきだし、他社の原発もそれなりのテストをすべきですが、それをしようとした菅前総理は国民・マスコミの大非難を浴びて退陣しました。
原発推進が今の日本の空気です。
そしてその空気に対してはどんな理屈も理論も通用しない。
大和バンザイ突撃はトップの一存だけで決まったわけではありません。
実行部隊のそれぞれの指揮官が意見を述べる場が持たれました。
そしてそこでは誰もが作戦に反対したそうです。
「・・・その日旗艦・大和で開かれた各司令や艦長の会合では、この出撃にたいして激越な反対論が次々にとなえられた。まこと当然のことであった。列席する者すでに次の出撃にて帰り得ぬことを、腹の底に叩き込んでいる武人である。また、そのつもりで己の死に場所を待っていた歴戦の猛将たちであった。時と場所さえ得れば、散るを潔しとする決意は眉宇にある。『我々は命は惜しまぬ。だが帝国海軍の名を惜しむ。連合艦隊の最後の一戦が自殺行であることは、絶対に我慢がならぬ』冷静な朝霜艦長・杉原与四郎中佐までが怒った。ここにも、『日本海軍の栄光のために』がまざまざと生きている」。
「大和特攻」の生き残り「矢矧」艦長・原為一大佐は「とにかく、ほとんど全員が反対しました。犬死になど絶対にご免だって・・・それで第1回の会合は終わったのです。草鹿参謀長は黙って聞いていました。その後続いて第2回の会議が再び大和艦上で開かれたのですが、この時始めて草鹿参謀長はおずおずと、『これは実は連合艦隊命令なのだ』と打ち明けたのですよ」と語っている。草鹿参謀長の「一億総特攻の魁となってもらいたい」との一言に、「そうか、よし、それならわかった」と、伊藤中将は頷きながら答え、すべては決した。
これで当時の空気の正体が分かりました。
一億総特攻です。
当時の日本では「一億総特攻」の空気こそ、どんな軍事理論をも超越した日本の最高意思だった。
今の原発事故への人々の対応もそれに近い感じです。
汚染を日本全国に拡散することに多くの自治体が同意し、あたかも「福島のみんな、君たちだけを被曝させはしないぞ。日本中のみんなが被曝するんだ。一億総被曝だ」と言っている感じがします。
また続きます。
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